2017年1月14日(土) 福岡県弁護士会館(福岡県福岡市中央区)
福岡県弁護士会 共謀罪シンポジウム
「政府批判はいけないことか?-共謀罪で表現の自由が奪われる!-」レポート


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<原田宏二氏>
共謀罪は罰則がある法律なので、
警察が捜査機関として法を執行するということになる。

共謀罪の法律だけ見ていると、いろいろな見方ができるので、
共謀罪は必要なのではという意見が出てくると思う。
法の執行機関として本当に今の警察でいいのかということまで
幅を広げて話をした方がいい。

そもそも共謀罪を考える前に、
一体、どんなことを政府、警察が考えてやってきたかを考えた方がいい。

ここ最近の話をすれば、
安倍内閣で「世界一安全な日本創造戦略」というものが平成25年に閣議決定された。
去年の5月24日には刑事訴訟法等の改正が行われた。
刑事訴訟法等の改正の問題ははるか昔から話をされてきたが、
去年改正された。

平成15年に鹿児島の志布志事件があり、
起訴された13人(途中、1名亡くなって12名)が全員無罪になった冤罪事件である。
平成14年には富山県では氷見事件があり、全然別の人物を逮捕して懲役刑となり、
あとで別の人が犯人だったとわかった冤罪事件があった。

この2つの大きな冤罪事件を契機にして
警察、検察の取り調べの可視化の声が大きく高まった。
(日弁連はその前から問題視していた)

その結果、去年、可視化の法律が衆議院で可決された。

結局、どうなったかというと
取り調べの可視化の対象は裁判員裁判だけに限定することになった。

実はこれはとんでもない話で、
警察が1年間で取り調べた被疑者の中で裁判員裁判の対象事件は
0.11%ぐらいしかない。
つまり、ほとんど取り調べの可視化の対象になっていない。

一方で捜査手法の高度化が必要だと言うことになって、
何が認められたかというと司法取引とか刑事免責とかを取り入れると同時に
通信傍受法を改正した。

通信傍受の対象を大幅に広げて、それまで通信傍受は通信会社に行って
通信会社の人の立ち会いがあって傍受をするというやり方をしていた。
それが警察施設で立会人なしで傍受できるように変わった。

取り調べの可視化、司法取引、刑事免責、通信傍受の中で
通信傍受だけはすでに昨年の12月に施行された。

肝心要の取り調べの可視化は警察も検察の試験実施しているが
実際の施行は先送りされている。


日本の犯罪はどうなっているというと、実は平成14年を契機に減っている。
平成14年の刑法犯の件数は258万件発生していたのをピークに、
平成27年には109万件になって、60%以上減っている。

こういう犯罪状勢にある中での共謀罪。

共謀罪は組織犯罪対策で組織犯罪とは何かというと、
暴力団犯罪、テロ、オレオレ詐欺などの特殊犯罪。

この他にも組織犯罪もあるが、この3つを代表的な組織犯罪として対象にしている。

この組織犯罪対策をこれまでやってきていなかったというと
いろいろなことが行われてきた。
以下、組織犯罪対策として次々に法律ができた。
・暴力団対策法
・組織犯罪処罰法
・テロ資金提供処罰法
・犯罪収益移転防止法
・通信傍受法
・コンピュータ監視法等

その中でも犯罪収益移転防止法はマネーロンダリングを防止するというもの。
実に銀行などの金融機関の民間事業者に
薬物犯罪収益などの200を超える重要犯罪について
犯罪で得られた収益と疑われる取引を届けろという法律を作った。

届けられた情報に基づいて警察は検挙している。

つまり、行政的な手法を使うことによって、犯罪捜査を行っているということ。
行政手法と犯罪捜査の手法をごちゃごちゃにしている。

犯罪捜査というものは過去に起きた犯罪の犯人と証拠を調べるというもの。
ところが、最近の警察官僚たちはそう思っていない。
犯罪が起きる前に捜査をする方がいいという事前捜査積極説が出てきている。
その一つの例が盗聴法だったり、秘密保護法、今回の共謀罪が出てきている。

事前捜査積極説が大幅に広がっている。
その一つの流れの一つが共謀罪である。

そういう前提があって、共謀罪が出てきた。
いきなり共謀罪が出てきたわけではない。


ところが、警察の今までの組織犯罪の捜査はどうなっているかと言うと、
暴力団犯罪捜査の検挙はものすごく低下している。

暴力団の情報が取れない。
山口組は警察に対して3ない運動というものをやっており、
警察官と接触しない、情報提供しない、取引しない。
暴力団側から絶縁状を突き付けられている。

それまで、長い間、暴力団と警察はなあなあでやっていた。
それができなくなった。
そういうこともあって、暴力団事件の検挙は非常に落ちている。

例えば拳銃押収の話。
これまで警察が暴力団から拳銃を押収した数が
最も多かったのが昭和61年の1551丁。
平成7年は警察庁長官が拳銃で撃たれた年では1396丁。
(警察のトップが撃たれた年)
平成27年は63丁である。

日本で最近の最も大きなテロはオウム真理教の事件。
あれは警察が失敗した。
最後はいくつかの事件を検挙できたが、
実際はかなり早い時点で捜査の対象にしていた。
結局は地下鉄サリン事件が起きて初めて動いた。
要するに抑えられなかった。
情報不足だったとか警察内部の情報がオウム側に漏れたとかとも言われた。
警察はテロの摘発、予防に失敗している。

オレオレ詐欺、特殊詐欺は最近、ときどきちょろちょろ検挙しているが
実際の首謀者までたどり着けていない。
組織の実態がわからない。情報が取れない。


組織犯罪について日本の警察は弱いのが実態。
しかし、それを当面の理由に挙げている。

また、この暴力団の取り締まり、テロ、特殊詐欺、
これを何とか解決するために必要だから
共謀罪が必要だと言われたら、反対できるだろうか。
大義名分で誰も反対できないはず。
そこである。
共謀罪はこれまで3回廃案になっているが、
安倍政権にとって国会情勢も非常にいいし、
このまま行けば間違いなく共謀罪は通る。

安倍政権はそこまで読んでいる。
国会情勢が変わり、いろいろと海外に目を向けると、
いろいろなテロ事件が実際に起きている。

オレオレ詐欺も全然検挙できない。
年間、被害額は500億と言われているが
検挙しても被害なんて回復できていない。

特殊詐欺の検挙率は全体の27%くらい。
日本警察の刑法犯の検挙率は32%。

つまり、10件犯罪が起きても3件くらいしか解決できる能力がない。
特殊詐欺はまだその下。
しかも首謀者を検挙できていない。


あの取り調べの可視化は囮だった。
本当の狙いは実は通信傍受法だった。
また、共謀罪隠しの世論対策だった。

特定秘密保護法も多くの反対があったができた。

そして、最終的に出てくるのが憲法改正。
ちゃんとそこまで読まれた上での一つの流れの中の
最終部分になりかかったところでできたのが共謀罪。


そして、もう一つ重要な問題がある。
デジタル捜査、監視の問題。

ここに来る間にいろいろな乗り物に乗ってきたと思うが、
ここに来るまでにあちこちに警察の言う防犯カメラ
監視カメラに映像を残さないでここまで来れない。
必ずどこかに記録が残っている。

今の警察の捜査では監視カメラ映像を使わない捜査は考えられなくなっている。
Nシステムも同じ。
そういうものが街中に張り巡らされている。

インターネットについてはインターネット監視法が民主党政権時代にできた。

GPS捜査を聞いたことがあると思うが、
裁判で違法だという裁判例が出たり、適法だという裁判例が出たりして、
最高裁で審議が始まろうとしている。

要するに、車にGPS発信器を取り付ける。
まさに、尾行のデジタル化。

こういうことが今、警察の捜査の中で大幅に取り入れられている。

DNAデータベース。
DNAは4兆7千億分の1の確率で個人特定ができる。
これはまさに究極の個人情報。
これを何の法律的根拠もなく、警察はどんどんDNAのデータベースを作っている。

監視カメラもGPS捜査もDNAデータベースも
警察がいろいろやっているが、法律的に根拠は何もない。

あちこち街中に監視カメラが取り付けられているが、
カメラを取り付けたら犯罪が抑止できるのか。
実際にカメラがあるところで犯罪は起きている。

神奈川県相模原市の障害者施設では例の事件で大勢の人が亡くなった。
あのときに、犯人の男が変な手紙を政府に出していたということで
危険な人物だということで、警察の指導もあって
元々、監視カメラを16台も取り付けていた。
でも起きた。

つまり、確信的な犯罪はカメラで抑止できない。
警察庁も防犯カメラで抑止できるとは言っていない。

それだけでは犯罪は抑えられない。
犯罪はそんな単純なことで起きているわけではない。
多くの人が監視カメラがあれば抑止できると勘違いしている。
気休めに過ぎない。

どうしても、警察の犯罪捜査に監視カメラが必要だと言うなら
法律でちゃんと認めないといけない。
それを何もしないで警察が必要だから勝手にやってくれというのはまずい。
警察にとってもよくないと思う。
長い間、犯罪捜査をやってきた。
犯罪捜査は性質上、秘密裏にやらないといけない。
しかし、警察の犯罪捜査はもっと堂々とやってほしい。
元警察官として、胸を張ってやってほしい。
それを泥棒猫のようにコソコソとやってほしくない。


そもそも警察は本当に信頼できるものだろうか。
冤罪とか誤認逮捕は依然としてある。

驚くかもしれないが、
未だにそうだが警察が作る公文書、
その公文書に対する警察の認識は非常に低い。

同じようなことが起きている。
デタラメな供述調書を作ったり、ニセの報告書を作ったり、
このようなことは内部でしょっちゅうある。

この前、警視庁が麻薬取締官を
ニセの調書を作ったということで逮捕したが、
あんなことは警察でしょっちゅうある。

警視庁はまるで他人事みたいに言って捜査しているが冗談ではない。
北海道でも同じようなことが先日あった。

警察が作る公文書は非常に信用することはできない。
作られた供述調書を使って令状請求しても裁判官が見抜けない。
だから出る。

令状請求の却下率は0.006%~0.007%ぐらい。
その程度しか却下されていない。

通信傍受するには通信傍受令状が必要だが、過去に一度も却下されたことはない。
全部、出ている。

警察の犯罪捜査は相当注意しないと危ない。

そこに、共謀罪。
共謀罪はいろいろな曖昧なところがあり、
警察の恣意的な判断で運用される危険がある。

特に個人情報の収集は野放しの状態。

警察が特定の個人情報の収集など簡単に取れる。
銀行口座など、刑事訴訟法の197条の2項の紹介できるという規定がある。
それを使ったら銀行口座の情報をすぐに取れる。

何の令状も必要なく、すべて任意で丸裸にすることができる。

監視カメラの映像も任意で取っている。
捜査関係事項照会書を一本を銀行に持っていけば銀行口座を取れる。

共謀罪、通信傍受もそうだが、個人情報保護をどうするか。
個人情報保護と警察の犯罪捜査のどうバランスを取るべきか。
今は完全に野放し。

共謀罪を作る前に警察による個人情報の収集を規制する法律を作らないとダメ。


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<青木理氏>
共謀罪の本質は何なのか。
警察の目線に立ってみる必要性が重要である。

元通信社で社会部記者を長くしていて、
警視庁の記者クラブで警備公安警察を担当していた。

一般の警察には交通警察、強盗や殺人事件を操作する刑事警察がある。
公安警察というのは政治的な思想に基づく犯罪の捜査、取り締まり、
事件が起こる以前の段階で情報収集して可能であれば防ぐセクション。

ちょうど、警視庁の公安警察を担当していたときにオウム真理教事件があった。
1995年、1996年くらい。

共謀罪ができた場合、主に公安警察が使うケースが多くなると思うが、
捜査目線、警察目線で立ったらどういうことになるのか。


日本の刑事司法体系の原則は基本的に起きた犯罪について処罰するというもの。
例外的に予備や未遂というものが処罰されるが、
原則として起きた犯罪を処罰するというものが原則。

共謀罪はそうではない。
起きていない犯罪の話し合いとか共謀とか同意とかを取り締まろうとしている。
つまり、日本の刑事司法体系の根本的な変革になると言っていい。

警察目線から考えたら、起きてもいない犯罪の話し合いとか共謀とか同意とかを
取り締まるためにはどうしたらいいのかということ。

つまり、犯罪が起きていないので、警察がこいつ怪しいな、こいつ危ないな
こいつテロリストではないのか、こいつ組織犯罪集団の一員ではないのか、
という人たちを日常的に徹底的に動向を監視していないと
共謀罪を使えない。取り締まれない。

この共謀罪が入るとどうなるかというと
警察が怪しい、危険だとみなした人物を監視をして情報収集をする。

先ほど、原田さんが警察による個人情報の収集が
共謀罪の問題の本質だと指摘があったが、まさにその通り。

警察官は概ね真面目で職務熱心だが、
しかし、しばしばとんでもないことを平然としでかす。

冤罪もそうだが、過去には
警察は盗聴していないと建前になっているが、
盗聴法ができる以前から警察は盗聴をしている。

公安警察に関して言うと、実は共謀罪と同じようなことをずっとやっている。
いわゆる過激派、左翼、極左と言われている人たちは
警察が怪しい、危険だとにらんで日常的に彼らの拠点に
監視カメラを設置して監視して徹底的に尾行して
接触した人物を尾行して監視をしている。
銀行口座から、酒癖から、異性関係まで
徹底的に調べ上げることをこれまでやってきた。

共謀罪ができるとなると、それをかなり広範囲でやれるようになる。
歯止めをかけないと、警察の中で勝手にやられかねない。

かなりきちんと歯止めをかけないと、
警察目線で立ってみると情報の収集の範囲が際限なく広がりかねない。


監視カメラを警察が縦横無尽に使い始めている。
防犯カメラ、監視カメラとかがあった方が安心安全じゃないかと言う人が最近多い。

川崎だったと思うが、警察庁が試しに
子供の通学路に監視カメラを何十台も設置しようと計画をやった。

地元の人にアンケートを取ったら、
7割くらいの人が安心安全のためだからやむを得ない、
多少のプライパシーを覗かれてもしょうがないのでは
という回答だったとのこと。

子供がいる親の気持ちになるとわからなくはないが、
しかし、それでいいのだろうか。

つまり、安心安全、しかも表層的な安心安全のために
僕らの自由やプライパシーを簡単に譲り渡していいのだろうか。

今、日本は治安は良くなっているが、殺人事件は年間1000件くらい起きている。
正確に言うと、警察が年間に起きたことを把握している殺人事件は年間1000件から1000件弱くらい。
知らないところで起きている可能性もあるので、もう少し多いかもだが、大体1000件くらい。

実は、そのうちの半分くらいは親族間の殺人。
つまり家族内の殺人。

殺人事件というのはいきなり通りすがりで、何も関係ない人を殺すよりも
親族間でいろいろな感情のもつれがあってカッとなって起こすケースが多く、
500件くらいが親族間の殺人。

もし、監視カメラに抑止効果があるとすれば、
すぐに検挙する、捜査に役立てるという目的があるとすれば
日本の全家庭に監視カメラを付けるべき。
しかし、それを言うと、みんな嫌だと言う。

どこまでプライパシー、自由を安心安全のために
テロ防止のために、どこまで許容できるのか許与できないのかという
重要な思想の問題がある。


共謀罪ができて、警察としてどうだろうか。
一生懸命に監視をして
彼らが危険と思う連中が不届きなこと、犯罪を起こす話し合いを捜査する。
なんとか共謀罪で取り締まろうとするだろうが、
しかし、おそらくそんなに簡単に立証はできない。

話し合い、同意、共謀とかどこでやるかというと
普通は誰もいない密室で行うか、秘密裏の電話だったり、
暗号化したメールだったり。
それを把握しないと立証できない。

となると、警察目線でいうとどうなるか。

極悪なテロリストの共謀を取り締まるために
もっと武器をくださいという話に間違いなくなる。

盗聴法は大幅に強化され、施行もされてしまった。
それをもっと強化させろという話になってくるだろうし、
おそらく密室盗聴もさせろと話になってくるはず。

今の盗聴法は通信の盗聴しかできない。

本当に用心深いテロリスト、犯罪者であれば
密室の中で会って極秘に話をする。

それを聞かないとなかなか立証ができない。

そうでなければ供述しかなくなる。
あのときは確かに共謀しましたという供述頼りになる。

さらに確実性を高めようとすれば
密室盗聴もさせてくれという話になる。

まじめな警察官ほどそう言い出す。
つまり、さらなる情報収集の権限を警察に渡すことになる。

そんなに警察に過大な期待はできない。

プライパシー、自由という大切なものを
極めて表層的な安心安全のために
どんどん譲り渡していいのかというのがこの問題の本質。


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<原田宏二氏>
元公安警察の話を聞いてみると、青木さんの指摘の通り。

常岡浩介氏を私戦予備陰謀罪で、警視庁の外事三課が捜索、差し押さえを行った。
強制捜査をして、常岡浩介氏は被疑者になり、あれからしばらく経っているが、
警視庁が私戦予備陰謀罪で立件、送検したと全然聞かない。

要するに情報収集のために捜査手法を使うということ。

裁判を始めるための準備行為としての捜査ではなく、
情報収集のための捜査を使うというのが公安警察の最大の特徴。
刑事警察では考えられない。

刑事警察からすると、強制捜査をやった事件は
絶対に裁判を始めてもらいたいと思ってやっている。
ましてや逮捕した事件は裁判をやらないでうやむやで終わらせられる、
つまり、検事が起訴しなかったということは捜査の失敗と思っていた。

公安警察はそう思っていない。
情報収集のために捜査という手法を使う。

警視庁公安部外事三課の国際テロに関する文書がネット上に公開された。
膨大な資料が外に出た。
これまでの公安警察ではこんなことは考えられない。
公安警察は鉄壁の保秘能力があるが、それが崩れたような事件だった。

このときに公開された文書にどういう内容が載っていたかというと、
個人情報を全部調べ上げていた。

写真、氏名、国籍、本籍
生年月日、日本国内の現住所、勤務先、身体特徴、家族関係、
モスクへの立ち入り状況、行動パターンの概要、所属団体など
すべて情報収集していた。

これがすべて暴露された。
もし共謀罪ができて、警察が捜査を始めた際、確実に情報収集を行う。
共謀の段階で犯罪が成立ということで、
今までやれなかったような捜査ができることになる。
しかも、立件をする必要がないという考え。

警察が恣意的な判断でなんぼでもできるということに
お墨付きを与えるというのが共謀罪。


警察という権力機関に対してチェック機能はもうない。

一番機能するはずの公安委員会がある。
警察を管理するという民間の人たちが集まって公安委員会を作って
警察の仕事の仕方を管理、チェックするというシステムが警察法には書いているが、
そんなもの、何も機能していない。

公安委員会というものは逆に警察に管理されている。
公安委員を選んでいるのは実質、警察。
都合のいい人物を警察が選んでいる。

公安委員会が全然機能していない。
議会も機能していない。

知事には予算権があって、警察の予算をチェックできる。
知事で警察の予算をチェックしたのは宮城県の浅野知事だけ。
浅野知事は宮城県警と予算執行で喧嘩になった。
警察の裏金問題が起きても、問題があると言ったのは宮城県の浅野知事だけ。

マスコミも機能していない。
マスコミの機能は権力の監視だが、まったくやっていない。
多くのジャーナリストも今のマスコミはまずいと言っている。
若い新聞記者と話してみると、彼らも今の状態はまずいと言っている。

本来、警察を管理、チェックしなければならないシステムはあるが、まったく機能していない。
そういう日本社会はものすごく危うい。


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<青木理氏>
警察という組織を法律知識以前にどう捉えるべきか考えないといけない。

公安委員会制度は戦後、GHQが主導して作られた制度。
警察を管理するのと同時に、政治が警察を勝手に動かさないようにするある種のクッション。

つまり、戦前、戦中、政治が警察を動かすのは
非常に危ない。だから、民間人有識者を含めた人々で構成する公安委員会。
警察庁だと、国家公安委員会。
国家公安委員長は国会議員から大臣として選ばれる。
それ以外は民間人有識者が入って、警察が管理するのと同時に
政治が警察に余計なことを口出したり、政治が警察を動かさないようにする意味がある。

基本、警察は暴力装置。
人を逮捕したり、強制捜査したり、そういうことができる装置。
つまり、よっぽど気を付けて制御しておかないと危ない。
だから公安委員会制度ができた。

暴力装置があるが故に監視しておかないと危ない、
というのが警察という組織の本質。
自衛隊も同じ。

国会議員や地方議会議員と話をするが、実は議員の方々は警察が怖い。
警察に恨まれて、公職選挙法でガンガンやられると息の根が止まる。
また、警察の問題を訴えても票にならない。

選挙で共謀罪に反対と言っても票にならない。
利益にもならないし、ましてや利権にもならない。

参議院のドンと言われた村上正邦氏がこういうことを言っていた。
「戦後の法務大臣で首相になった人物は一人もいない。」
どういうことかというと有力な政治家は法務大臣なんかならないということ。

戦後の法務大臣で有力な政治家と言えば、
後藤田正晴、梶山静六、谷垣禎一ぐらい。

ほとんど有力な政治家はならない。
村上正邦氏によると、大臣の職というのは
人気があり、権限があり、票になって、利権があるという大臣は
衆議院でまず取っていく。
最後の最後に2つくらい余って参議院に回ってくる。
参議院の方も当選回数が多くてそろそろ大臣にしてやるかという人物を
法務大臣に付けるらしい。

法務大臣というのは閣議のときに
首相がいて隣に座るという格の高い大臣だが、
実は非常に軽く扱われてきた。

何故かというと、法務大臣というのは他の大臣と比較して権限が少ない。
警察というのは準司法機関として非常に独立性が高いので、
そこに口を出すというのは基本的にできない体制になっている。

他の大臣みたいに威張れないのもあり、何よりも票にならない。
逆に法務省、検察、警察を怒らせると怖い。

つまり、警察、検察をチェックする能力はこの国の場合は非常に弱い。
警察、検察、自衛隊は暴力装置なので、かなりきちんと歯止めをかけないと危ない
というのを共謀罪以前に基礎的な考えとして強く持つべき。


刑事訴訟法の改正はとんでもない改悪だったが、
非常に盛り上がらなかった。

共謀罪に関しては社会の拒否反応が一定程度以上あるのかなと思っている。
公明党も反発している。
それが3回に渡って廃案になった一つの原因。

先の臨時国会にも共謀罪を出そうとしていた。
朝日新聞が1面で共謀罪提出検討と報じて、それを受けて各メディアも報じた。
政権にとって他にTPPなどの重要法案があったので見送ろうとなった。

今回の通常国会に共謀罪を出してくるだろうが、今回も重要法案目白押し。
天皇の生前退位特例法など、自民党内でもかなり議論を呼ぶテーマになるはず。
これに加えて共謀罪なので、真剣にいろいろな声が出てくることを願う。

共謀罪は思想、内心の自由にかかわる問題。
起きていない犯罪をその前の段階で取り締まるということは
警察が日常的に一人一人を監視しないと無理。
極端なことを言えば、人間の尊厳に関わりかねない悪法だと思っている。